クライマーズ・ハイ

クライマーズ・ハイ (文春文庫)

クライマーズ・ハイ (文春文庫)

すごいリアリティで語られる作風は、今までの作品たちと同様。しかし、正義・倫理(刑事)がビジネス(もろもろ新聞関係)に変わっただけで、こうも受け止め方が変わるか。
私にとって、この作品は横山氏の最高作品になった気がする。


陰の季節、私の知らない世界を教えてくれました。視野が広くなった気がしました。
FACE-顔-、確かに成長物語として傑作です。主人公の成長のさま(+ラッキーさ)がキャラに感情移入させてくれました。
第三の時効、確かに物語として強烈な個性を持ったキャラたちのクロスオーバーの要素が加わり横山氏の作品がさらに一歩「進化」したと感じました。


仮に「読者をドコまで巻き込めるか、感情移入させるか」がその作品の強さだとするなら、この作品は確実に最強の作品の1つであり、イチサラリーマンとしての私の心を鷲掴みにしました。



と、中盤まで思ってました。



確実に、もろもろ思い通りにならぬことを抱えて日々送るリーマンとしては中盤までは(正確にはテーマが「自分の仕事のやり方(へのプライド)」「セクショナリズムのバトル」「家庭」「後輩」「メンツ」などなどまで)主人公の悠木氏は私のヒーローでした。

ああああ、なんと言うか、難しいですね。
自己を投影する対象としては、中盤までが最高でした。
物語としての美しさとして、作品全体は良いのです。
でも、後半で急速に「ちょっとー 悠木さーん!」てな感じにトーンダウン。
我が闘争の代弁者」であるはずの悠木さんが、ヒューマニズムとビジネスの間に挟まれてしまいました。(しょぼーん)なんかこういうと私が人でなしみたいですがw


悪くないのです。決して悪くないのです。
イノチの重さを語る上で、作者である横山氏の経験、そして恐らく体験したのであろう「その現場」(詳しくは作品をご覧ください)が土台になっていると思われるので、作品としての完成度は一級品だと思います。
これは事実です。

このちょっとした残念感は私が前半に主人公に「のめり込みすぎた」だけなのです。

うむぅ。