紀文大尽舞

紀文大尽舞 (新潮文庫)

紀文大尽舞 (新潮文庫)

最近お気に入りの米村圭伍氏の作品の文庫化。
ところでミステリーとサスペンスの違いって


ミステリーは犯人がわからなくて、サスペンスは犯人がわかるとかなんとか
(いや、逆だったかな? ←って端っからグダグダですが)

これまで米村氏の作品を好んだ背景は「敵も味方もグダグダ。でも主人公が(微妙に)一歩抜きん出ている」ってあたりが落語チック、かつギャグマンガ的、でも「話として成立している」+「短いスパンで畳み込むように展開される(考える暇を与えず盆暗な展開が繰り広げられる)」ってことで魅力だったのですが、この作品は長編かつ終盤まで「じっくり語り」+「犯人が見えない好作のミステリー」でした。

ミステリーとサスペンス(あるいは、ダヴィンチなんちゃらと、13日の金曜日)は「謎」の扱いには違いがありますが、私が米村氏を好きになった理由は「緊張感とグダグダが入り混じったサスペンス」なのです。
(さらに言うとデスノートであって、金田一少年ではないのです)

まぁこの作品はこの作品で「不特定多数の語り」を交え、真理に近づこうと言う「正真正銘のミステリー」タッチ。ミステリーとしてはこれまでの「風流冷飯伝シリーズ」より、かなりキッチリミステリーです。これはこれで、じわじわと「真理」に近づいていくさまは圧巻です。

でもね、途中途中でヒントを与えて、冗長とは言わないけど、引っ張られて読んでると、もう後半であいつが出てきたら「ソイツが…」とか思っちゃうわけですよ(それはそれで胸がすくけど)。


でもやっぱわがままな読者としては、求めているものが「違う」わけで、やっぱ「敵も味方もグダグダ」ってのが魅力なわけで、途中途中の主人公の(大人のユーモアも含めた)ユーモラスな描写も米村氏らしくはあるんだけど、私が惹かれた場所はそこじゃあなくて。

てなことで、私が読んだ米村氏の作品の中で「最長」「ミステリとして最重厚」のものかと思いますが、この作品は私にとって「最良」ではありませんでした。

でも作品の発表順で言うと「退屈姫君」の後発シリーズは、この作品より後とか聞いてますし、彼の目指す方向性の一つと、私の好みが合致しているようなので、よかったなぁと一読者として幸せに感じます。

まぁ、いずれにせよコイツは「良い作品」であることには変わりないので、オススメです!



好き勝手言いましたが、みなさんはどうですかねぇ? 紀文大尽舞は? 特に「退屈姫君伝」*1好きに聞きたい。(つーてもあまりブログにコメントする方は多くはないと思いますがw)