魔風海峡 (上)(下)

魔風海峡 (上) (祥伝社文庫)

魔風海峡 (上) (祥伝社文庫)

魔風海峡 (下) (祥伝社文庫)

魔風海峡 (下) (祥伝社文庫)

この後の作品である「魔岩伝説」が個人的な経験則からイマイチに感じてしまったので、改めて挑戦した「その前の作品」です。で、読んでみて、思ったのは「読みたかったのはこんな作品だったのですよ!!」ということ。


ざっくりあらすじをいうと、むかーし(白村江の戦いあたり)に、日本が朝鮮に隠した大量の金塊を「真田幸村率いる真田忍軍(豊臣軍のサポートのため)」と「朝鮮の王子率いる高麗七忍衆(明からの真の朝鮮独立のため)」取りっこする、っていう話です(ほんとザックリですが)。でもね、ココの「忍術バトル」がすげーのですわ!


解説を読むに、作者である荒山徹氏は「好きなものは小説しかなかった」ということで、さらにこの前の作品であり処女作である「高麗秘帖」を書かれたらしいですが、この魔風海峡を読むと、「いやぁ、本当はマンガも好きなのでは? 白土三平とか男塾(つーか民明書房)とか好きでしょー?」*1と邪推してしまうほど「技の歴史系ウンチク(と言いつつトンデモ)ネタ」に満ち溢れています。双方の忍術が「史実ッぽく」語られているのですが、もう、もう、本当にすごい。ギミックとしてはスタンダードなものも多く、見たことあるネタもあるかも知れないけど、「ソレをココに持ってくるの?」という挑戦っぷりなのです。

ああ、これですよ読みたかったのは。もう、作品中、(史実をベースにしたフィクション(というか伝奇)だと思うのですが)「何!? 荒山氏、あの技を知っておるのか!?」的な<雷電の解説が地の文で登場>という感じの展開で、本当にエクストリーム。素晴らしい。

伝奇モノとマンガ(特にバトル系)は「荒唐無稽」「破天荒」という意味で共通のキーワードを持っていると感じている私ですが、久々に「よもやあのような技を使う(&解説する)ものがいようとは(特に中盤)」という感じで、改めて己の視野の狭さを反省する次第。いやぁ、こんなに乱暴な人生の先輩がいてキッチリ売れてる世の中はなかなか捨てたモンじゃないですよw。

よそ様の「荒山氏のほかの感想(特に十兵衛両断)」を読むに、他の作品でもその辺の「エクストリームっぷり」が十分に発揮されているようなので、ちょいと見てみようと思います(といいつつ、シベリア柳生という単語もなぜか知ってたりして、またしてもどっちが先!?みたいな話もありますが*2とかあるけど、シベリア柳生と高麗柳生では「高麗柳生」の方がどちらかというと先*3のようですな。でも、まぁコレも作品としてもして双方面白ければあまり突っ込むべきところではないと思うので、どうでもいいですが)

まぁメジャーな素材(柳生とか十兵衛とか)にはいろいろと似たネタも発生してしまう可能性は否めないので、なんともいえませんが、確実にいえるのは「荒山氏、面白い」ということです。
また、この感想ではあまり語っておりませんがドラマとしても、双方の「信念」「願い」などが十分に語られており、「どっちも勝って〜!」的な無責任な応援をしてしまう程重厚に描かれています。
魔風海峡、オススメ。
「高麗秘帖」も「十兵衛両断」も読まねば。

*1:でも、解説でも<昔の特撮の影響を受けているのでは?>的な推測もされておりましたので、ある意味「宮下先生と似たベースを持っている」とも言えるかもしれません。ちなみに荒山氏は私より10上の方。宮下先生は14上です。

*2:前作で萎えた理由はこちら((http://d.hatena.ne.jp/djrtaro/20060808

*3:十兵衛両断…2003.6リリース⇔十兵衛ちゃん2 〜シベリア柳生の逆襲〜…2004.1放映開始?