出口のない海

出口のない海 (講談社文庫)

出口のない海 (講談社文庫)

横山秀夫氏」が「回天」を描く。これはコーラを飲んだらゲップが出るっていうくらい確実に悲劇になる、と思い、わざわざ金と時間を使って悲しい思いはするまい、と手にとっていませんでしたが


やはり気になったので読んでみた。

横山氏の持ち味である「リアルにじっくり描く」というところが余すところなく発揮され、「回天の悲劇」と同時に「戦争の悲劇」「若者の悲劇」も描かれておりました。

オハナシは当初予想していた通り悲劇。
詳細は「推して知るべし」なのですが、主人公の周囲に「野球」「恋愛」を配置することでオハナシとしての厚みを出し、さらに「その歳にしては思慮深いと思われる人々(モノローグから推測)」の言動で悲劇としての厚みを出している感じ。

戦争の悲劇を後世に伝えるための作品としてはかなり良い出来だと思いました。

でも、読んでて悲しくなっちゃうんだよな。
戦争、悲しいな。

今まで「戦争イクナイ」とは言ってきましたが、横山氏の筆により「イクナイ」に加え、「悲しい」と改めて強く思う作品でした。


悲しいので「読書に娯楽を求める人」にはお勧めはしませんが、「知識を求める人」には、イチ戦争関連図書としてオススメ。