決闘者 宮本武蔵(2)

柴錬版宮本武蔵の第二巻。1巻から豪華でしたが、2巻は本筋以外の周辺情報の充実していて、本当に面白い。


ちゅうか、多分初出である「週刊連載」のための「一本調子にならないような工夫」あるいは「重厚さを出すため」の「寄り道」だと思うのですが、時代小説ではよくある話だし、時代小説的ネタがすきで読んでいるので、むしろ大歓迎な感じ。


で、本筋がおろそかかというとそうではなく、キッチリ「ここまで描かれてきた<決闘者>である武蔵が描かれています。
吉岡一門とのバトル(あ、いや、ココは<決闘>というべきか)は都合3回あるわけですが、3回目が一番凄絶でしたな。作品によっては「しゅっと表れて、さくっと斬って、去っていった」という風に「武蔵の「目的に対して逡巡のない迅速な行動」として描くものもありますが、この作品では「斬った後」がすごくピンチ。
まぁ、普通に考えて一番「相手の数が多い<決闘>」ですので、当然といえば当然なのですが。
「負けないために工夫を凝らす」という造形が多い武蔵ですが、ここではあくまで<決闘>として知恵を使いつつも、血みどろの<決闘>を演じます。
この辺は眠狂四郎にも通じる「自分の生き様に対して背を向けない頑固さ」なのかな。

頑固さといえば、人の集まる場所を嫌う性格も、作品を通じて一筋縄では行かない感じ。
淡い恋心を胸に秘め、孤独を孤独と感じなかった「津本陽氏版武蔵」とはそのあたりが違うかな(後半からちょっと心境の変化も見えてはくるけど)。

そんで、1巻で感じた豪華さも、保ってますよ。
柳生宗矩も出るし、(私は知らなかったけどすごい人らしい)松山主水*1、実在したかどうかはわからんけどオランダの剣士、後藤又兵衛、柳生の剣客(使う技は虎乱?)などなど、さまざま登場。
薀蓄、ドリームマッチなど時代小説の面白さも含みつつ、アウトロー的なピカレスクな魅力も持つこの作品。柴錬作品って、やっぱ面白いわ。さすが。オススメ。