魔岩伝説

魔岩伝説 (祥伝社文庫)

魔岩伝説 (祥伝社文庫)

書店で平積みになってたり、伝奇ものとしてなんかよそ様で褒められていたので買ってみた。


大筋は「朝鮮の通信使」をめぐる謎にまつわる話。忍術や剣豪(柳生の傍流の人も出てきます。実在しない人だと思いますが)など、ギミックは盛りだくさん。さらに、歴史伝奇モノとしての「表歴史と帳尻がしっかり合った展開」や、それとなく「本当にそうだったに違いない!」と思える説明など細かいところも丁寧に作り上げられています。要素としては十分「歴史伝奇モノ」なのですが、個人的には、ちょっと物足りない感じもありました。



ソレはなぜかというと・・・「ネタとしてどっちが先か?」というのはこの際おいといて言うと、「竜巻を起こすエネルギーを噴出する貝」とか、獣化する忍者とか、ちょっと既視感のあるネタがあったという点(後者は普遍的にあるネタですが)。

あとは、なんか「記憶喪失にしちゃう忍術」とか、ちょっと<展開のためのご都合主義>的に思えるネタもあってなんかイマイチワクワクできない感じ。(歴史的に時間の帳尻合わせの必要があったのかも、とも思いますが)
でーもーさぁー、忍術は「敵を倒す(バトルの)ための忍術」であって欲しくて、「お話を作者の有利に進めるための忍術」であって欲しくないのです。そんな斬りつけただけでそんな複雑なことが出来るなら殺せばいいのに、とか思うのです。それに、言うほど妖術合戦も剣戟も多くなかったし…。


最後の(とある坊さんの)仕掛けもなかなか面白かったのですが、そのピンチの作り方もなんかイマイチだし(そんな大事なモンしくじるなよ!!!)、最後の最後のオチもなんか中途半端に感じました。

とはいえ、今回序盤に「貝が出てくるところ」で結構萎えてしまって必要以上にマイナスに見ているのも事実なので、ちょいとノレてない感想ですが、話はしっかりしてます。ギミックの部分で萎えただけです。ということで、この前の作品(魔風海峡・・・これは大々的に忍術バトルを銘打っているので楽しいでしょう)を読んでみようと思います。





蛇足
調べてみたら、似たような時期に出てますな。
魔岩伝説:02年9月
ワンピース(第240話ダイアル・エネルギー):02年7月
つーことで単純にパクリとかって話ではなさそうです。校正したり、刷ったりなんだりする時間もあるでしょうから。
と思ったけど、私が知らないだけで、実はメジャーなギミックかもしれないし(山田風太郎作品はあえて読んでいなかったりもするし)、「魔岩伝説」の前の作品にこの「エネルギーを溜め込んでいる貝」が出ている可能性もあるのか? まぁいいや。魔風海峡を読んでみましょう。